主の祈りについて

著者: 
マルティン・ルター (神学者、宗教改革の創始者)
翻訳: 
高木賢(フィンランドルーテル福音協会、神学修士)

家の主人がその家に属する者たちに対して単純に教えなければならない場合の説明の仕方は、以下の通りです。

天におられる私たちの父よ。

これは、どういうことですか?

答え。
神様が私たちの真の父であり、私たちが神様の真の子どもであることを信じるようになるために、神様は私たちの心をこの言葉によって動かそうとなさっています。それは、ちょうど愛する子どもたちがその愛する父親にするであろうようなお願いの仕方で、私たちがしかるべき信頼と確実な期待とを寄せて、神様に願い求めるようになるためです。

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第一の願い 

あなたの御名が聖とされますように。

これは、どういうことですか?

答え。
神様の御名は、確かにそれ自体、聖なるものです。しかし、私たちはこの祈りによって、神様の御名が私たちの間でも聖なるものとされるように祈るのです。

これは、どのようにしてなされるのですか?

答え。
神様の御言葉が純粋に混じりけなく教えられ、私たちが神様の子どもとして御言葉に従った聖なる生き方をするときに、それは実現します。天におられる愛する父よ、このために私たちを助けてください。ところが、神様の御言葉の教えることとは違うように教えたり生活したりする人は、私たちの間で神様の御名の神聖さを汚すのです。天の父よ、このことから私たちをお守りください。

第二の願い

あなたの御国が来ますように。

これは、どういうことですか?

答え。
たしかに神様の御国は、私たちの祈りがなくても、おのずと到来します。しかし、私たちはこの祈りにおいて、御国が私たちのところにも来るようにと祈るのです。

それは、どのようにしてなされるのですか?

答え。
天の父が私たちに御自分の聖霊様を与えてくださる結果として、私たちが神様の恵みによって、聖なる御言葉を信じ、この時間の世界においてもかの永遠の世界においても神様に喜ばれる生活をするときに、それは実現します。

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第三の願い

あなたの御心が天においてなるように、地上でもなりますように。

これは、どういうことですか?

答え。
神様の恵み深い善き御心は、私たちの祈りがなくても、十全に実現します。しかし、私たちはこの祈りにおいて、御心が私たちの間でも実現するように、と祈るのです。

これは、どのようにしてなされるのですか?

答え。
悪魔やこの世や私たちの肉の意志などのように、私たちに神様の御名を聖とさせまいとし、御国を来させまいとする、あらゆる悪い陰謀と意思とを、神様が打ち砕き、妨げて、御言葉と信仰のうちに、私たちの終わりの時まで、私たちを強め、保ち、堅固にしてくださるときに、それは実現します。これが、神様の恵み深い善き御心です。

第四の願い

私たちに今日も日ごとの糧をお与えください。

これは、どういうことですか?

答え。
たしかに神様は、私たちの祈りがなくても、さらにはすべての悪人にさえも、毎日の食べ物を与えてくださいます。しかし、この祈りにおいて、神様が私たちにこのことをわからせてくださり、自分の毎日の食べ物を感謝の言葉をもって受け取るように、私たちは祈るのです。

毎日の食べ物とは何ですか?

答え。
それは身体の栄養や生活に必要不可欠なすべてのもののことです。そのようなものとしては、食べ物と飲み物、衣服と履き物、家と中庭、畑と家畜、金と財産、正しい信仰をもつ配偶者、正しい信仰をもつ子どもたち、正しい信仰をもつ使用人たち、そしてまた、正しい信仰をもつ信頼できる支配者、よい政府、よい天候、平和、健康、秩序、栄誉、よき友人たち、信頼できる隣り人などがあります。

第五の願い

私たちに(罪の)負債のある者を私たちが赦すように、私たちの(罪の)負債をお赦しください。

これは、どういうことですか?

答え。
私たちはこの祈りにおいて、天の父が私たちの罪に目を留めようとはされないように、またこうした罪のせいで私たちの祈りを拒まれないように、と祈ります。というのは、私たちは祈ることにさえ値しない者であり、自分には何の功績もないからです。ところが、天の父は恵みにより私たちにすべてを与えようとなさっています。(恵みにより)というのは、私たちは日々多くの罪を犯しており、その報いとしてその罰を受けるのが当然であるはずの存在だからです。ですから、同様に私たちもまた、私たちに対して罪を犯す者たちを心から赦し、喜んで親切にすることを真に望むのです。

第六の願い

私たちを誘惑に導き入れず、

これは、どういうことですか?

答え。
神様は誰のことも誘惑に導き入れることはありません。しかし、私たちはこの祈りにおいて、 悪魔やこの世や私たちの肉欲が私たちを欺いたり、間違った信仰や絶望やその他の大きな不名誉や悪習に導き入れないようにするために、神様が私たちを助けて保ってくださるように、と祈るのです。また、私たちがそれらのものの誘惑を受けるような場合にも、最後には打ち勝って、勝利を得るように、と祈るのです。

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第七の願い

悪から救い出してください。

これは、どういうことですか?

答え。
私たちはこの祈りにすべてを包み込みます。天の父が私たちを、身体と魂、財産と名誉に関するあらゆる悪から救ってくださり、そして、ついに私たちの最後の時が訪れる時には、祝福された臨終を私たちに与えてくださり、恵みにより、私たちを御自分に帰属する者として悲しみの谷から天の御国へと連れ去ってくださるように祈るのです。

アーメン。

これは、どういうことですか?

答え。
これらの願いが天の父にとって好ましいものであり、天の父が聴いてくださることを、私たちは確信するべきです。なぜなら、神様御自身が、このように祈りなさい、と私たちに命じ、私たちのことを聴く、と約束してくださったからです。「アーメン、アーメン」と言うことは、「本当にそのとおりになります」、という意味です。